卒業論文のような長い文章を書くときに重要なことは,つねに論文全体の話の流れ,つまりストーリーを考えることです。自分が卒業研究で行ったことを単に列記しただけ,自分の考えを思いつきで書き並べただけでは,とても「論文」とはいえません。

例えば,論文の最初には「序論」や「はじめに」といった導入部分がありますが,一般にこの導入部分では,「なぜこのテーマを選んだのか」,「そのテーマについてのこれまでの研究にどんなものがあるか」,「自分の研究はそれらの研究とどう関係しているのか」といったことが説明され,研究の意図が明確に述べられます。論文は自分の研究を他者に理解してもらうためのものですので,これからその論文を読むにあたって何に注目し,とくに何を理解してほしいのか,その論文の読者に説明する必要があるわけです。したがって,論文を書く際にはまず論文の構成(ストーリーライン)をよく考えてから書き始める必要があります。ワープロに必要な項目を書き出して,ワープロ上で構成を考えるのもいいですが,段落の順序を入れ替えたり項目を追加したりといった作業は,ワープロよりもアイデアプロセッサアウトラインプロセッサと呼ばれるソフトの方がスムーズに行えます。

アウトラインとは文章の骨組みのことです。例えば,一般的な科学論文では「序論」,「方法」,「結果」,「考察」,「文献」という大項目があり,これらの項目はこの順序で配置されています。そして,「序論」はその研究テーマの背景や問題提起,研究目的などで構成され,「方法」は実験・調査の参加者や,使用した機器,調査票,実験・調査手続きの説明で構成され……と,それぞれの大項目はさらにいくつかの項目にわけられ,整理されているのです。何をどういう順序で説明するかによって話のわかりやすさは大きく変わりますから,あらかじめしっかり話の骨組みを作っておき,そこに肉付けしていくという手順が大事です。そこで,論文を書き始める際はまず,必要な項目をアウトラインプロセッサに記入し,それらを整理し,そして各項目に詳細を書き加えていきます。そしてある程度話の流れができあがった段階で,ワープロソフトにファイルを書き出し,論文の書式を整えるといったやり方がよいでしょう。

アウトラインプロセッサ

一般的なアウトラインプロセッサでは,アウトライン項目はリスト形式(箇条書き)で表示されます。各アウトライン項目は,マウスのドラッグなどで自由に順序を変えることが出来ます。また,階層関係(親子関係)を作成して各項目をグループ化し,必要な部分だけ表示するといったことも出来ます。

次の図はリスト表示型のアウトラインプロセッサの例です。この例では,「序論」の項目にさらに「導入」,「研究背景」,「目的」といった小項目が設けられ,それぞれの小項目の中には,話の流れを作る上で必要と思われる項目(「何がわかっているか?」など)が並べられています。

このようにして論文の大まかな話の流れを整理した上で,より細かな部分を書き加え,最終的に1つの文章としてまとめていきます。これらのソフトはあくまで文章の構成を考えるためのものですので,文字の大きさを設定したり,表を作成したりといった機能は持っていないことがほとんどです。ある程度論文の骨組みが完成したら,ファイル書き出しやコピー&ペーストでワープロソフトに内容をコピーし,ワープロで文書の整形を行います。

アイデアプロセッサ

より視覚的に文章構成を行えるソフトもあります。これらは一般にアイデアプロセッサと呼ばれ,その多くはツリー(系統樹)型や放射状のマップ(関係図)の形で各項目を表示します。

次の図は,先ほどのアウトラインをツリー型(1つ目の図)やマップ型(2つ目の図)のアイデアプロセッサで表示させた例です。マップ型のアイデアプロセッサには,それぞれの項目を矢印でつなぐなどして,項目間の関係を示すことができるものもあります。こうした機能は,論文作成のためのアイデア整理だけでなく,これまでに読んだ本や論文の内容をまとめたり,授業ノートの補助として授業内容の整理に使ったりといった使い方もできるでしょう。

 

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