「結果と考察の違いがわかりません」,「考察の書き方がわかりません」。実験演習などで何度も実験レポートを書く経験をしてきているにもかかわらず,これまた毎年のように聞かれる疑問です。結果と考察は何が違うのでしょうか。考察には何をどのようにかけばいいのでしょうか。

結果と考察の違い

結果考察の最大の違いは,結果が得られたデータの集計結果や分析結果など,調査や実験によって得られた事実を書くところであるのに対し,考察はそれらの結果が意味すること,つまり結果に対する解釈を書くところであるということです。

「○○の平均値は××だった」,「男女で差が見られた」,「○○と△△の間に強い関連が見られた」などは,集計や分析によって実際に得られた結果であり,(分析方法が適切でないという可能性はあるものの)こうした結果が得られたこと自体は明白な事実です。これに対し,「○○の得点が高かったのは××の影響であると考えられる」,「男女で差が見られたという結果は△△が□□であることを意味する」などは,あくまで得られた結果に対する1つの解釈であり,それがどこまで確かであるかはわかりません。それが確かであるという絶対的な保証はないけれども,そう考えるのが妥当であるという内容を書くのが考察ということになります。

ここで注意して欲しいのは,解釈だからと言って何を書いてもいいというわけではないということです。また,解釈は感想とは別物です。考察に書くべき内容は,実験や調査で得られた結果や先行研究の結果などを総合した筋の通った解釈である必要があり,自分勝手な解釈や思いつきではだめなのです。考察で結果の解釈をする際は,先行研究の結果を引用したりしながら,そう考えられる根拠論理的に示すことが求められます。

考察の一般的な流れ

考察の書き方にも,一般的なパターンがあります。一般に,考察は次のような流れで構成されます。

  1. 研究概要と結論
  2. 先行研究との結果の比較,結果の解釈
  3. まとめと今後の展望

まず,考察の最初の段落では,研究の概要を簡潔にまとめ,その調査や実験の結果が仮説に一致したかどうかが述べられます。

本研究では,○○における××の効果について検討するため,△△を対象とした調査を実施した。調査の結果,○○において××は□□であったことから,本研究の仮説は支持されたと考えることができる。

このように,まず初めに研究の目的,対象や手段,主要な結果と,それが意味することを非常に簡潔にまとめます。また,この段階で仮説が支持されたかどうかなど,結論についてもはっきり述べておきます。そしてそれ以降の段落で,個別の結果についてより詳細に考察を加えながら,そのように結論づけた根拠を詳しく説明して行きます。

個別の結果についての考察では,主に

  • 先行研究結果や理論やモデルから予測される結果と自分の研究結果の比較(一致していたかどうか)
  • 予測された結果と一致であった場合,それが何を意味するのか
  • 予測された結果と不一致であった場合,なぜそのような違いが生じたのか

について記述していきます。

この時,序論と考察は関連しているという点に注意してください。序論ではたくさんの先行研究が引用されているのに,考察ではそれらにまったく言及されていないというのは問題です。序論で引用した文献すべてに言及する必要はありませんが,研究目的を明確化する際に引用した主要な研究に対しては,それらの研究結果と自分の結果を比較し検討する必要があるでしょう。その逆に,序論でまったく言及されていない文献が考察に多数引用されているのも問題です。新たな文献を考察に引用する場合には,序論を修正して序論と考察のバランスをとるようにしてください。

言い訳は不要

実験や調査の結果が予測していた通りにならなかった場合,その理由の説明が単なる言い訳になっているのをよく見かけます。たとえば,

  • ○○に差が見られなかったのは,対象者数が少なかったからだ
  • ××が仮説と異なっていたのは,○○の方法が適切でなかったからだ

などです。

これらはいずれも,「だったら必要な数の対象者を用いなさい」,「それなら○○の方法を修正してやり直しなさい」ということになり,こうした説明からは何も新しい知識が得られません。そもそも,実験や調査の際には適切な対象者数や適切な方法についてはあらかじめ十分に検討されていなくてはなりません。

結果が予測と異なっていた場合にも,そこから何か新しい発見があるはずです。

本研究の結果は,当初の予測とは異なるものであった。○○ら(20xx)は××が△△なのは□□のためだと説明しているが,本研究の結果からは××が△△なのは☆☆によるものである可能性が考えられる。また,本研究の結果は◇◇ら(20xx)の結果に類似しており,このことからも☆☆の影響による可能性が強く示唆される。

本研究では,××が△△に影響すると仮定していたが,××による影響は観察されなかった。なお,本研究では△△に対する☆☆の影響は考慮していなかったが,○○群では××に対して☆☆による影響が認められた。このことから,××の△△への影響には☆☆が関与している可能性も考えられる。この点については今後の検討課題といえるだろう。

上の2つの例では,予測と実際の結果に違いが生じた理由について,今後の研究における検討対象となるような新たな可能性を示す形で説明しています。もちろんこじつけでは困りますが,「予測した結果にならなかった」ことが新しい発見につながることも十分あり得ます。思った通りの結果が得られなかったから失敗だと考えるのではなく,なぜ思った通りの結果が得られなかったのか,様々な角度から解釈しようとするようにしてください。

最後のまとめ

主な結論はすでに考察の最初の段落で述べられていますが,考察の最後では考察全体を通しての総合的な結論を述べ,さらにその結論にどのような意味があると考えられるかを説明します。このとき,やはり序論との関係を意識するようにしましょう。序論の中では自分の研究の意義について述べているはずです。序論で述べた研究意義ときちんと対応をするような形で,今回の研究から得られた結論が持つ意義について説明するようにしてください。たとえば次のようになります。

以上のことから,本研究では○○が××である可能性が示された。これは□□における○○の性質についての理解を深めるものであり,これにより○○のより効果的な利用につながることが期待される。

今後の課題・展望

考察の最後に今後の課題や展望を述べることもよくあります。今後の課題について書きなさいというと,「今回は○○についてわかったので,次は××についても調べて見たい」などと書く人がありますが,それは単なる感想であり,考察に書くべき内容ではありませんので注意してください。

今後の課題としては,今回の研究で十分に明らかにできなかったこと,あるいは今回の研究で新たに生じてきた疑問などがあてはまります。また,今後の展望としては,今回の研究テーマについて今後どのように研究していくのが良いと考えられるかなどがあてはまります。つまり,序論で取り上げた「より大きな目標」に到達するために必要と考えられることを書く必要があるのです。

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